
従来の生活様式から大きな変化を見せている昨今、テレワークの実施や導入を検討する企業が増加し、導入課題や実施効果などが話題になっています。成功事例の一片だけに惑わされず、貴社に適合したテレワークを考える上で大切な5つのポイントを、4+1ステップで実行してみましょう。
最近話題のテレワークに関して
昨今、働き方改革の一環で、テレワークの実施や導入を検討している企業が増加しており、新型コロナウイルスに起因する有事の現在、さらに多くの企業が、テレワークの実施、導入検討をしています。
テレワークを導入した企業が感じる効果は様々ですが、
- 通勤時間の削減により、従業員満足度が上がった
- 以前では採用できなかった働き手を採用できるようになった
- 生産性が上がった
など、代表的な効果が確認されています。
一方で、
- 自宅では集中できない
- テレワークに慣れるまで時間がかかった
- 日中は子供がいて集中できないので、子供が寝た夜中に作業をしている
という声を耳にすることがあります。
総務省(2019※)の企業におけるテレワーク導入状況の調査では、19%の企業がテレワークを導入しているという結果となっています。まだ一部の企業の導入で止まっていることが現実です。テレワークの実施といっても、実際に導入できる業種・業務内容が広くないことが起因しているでしょう。
[ テレワーク実施・導入の条件 ]
① 誰かと対面して行う必要が無い業務であること
② 機密情報を扱うような業務では無いこと
この2つの条件を満たした業務・業種であり、物理的な制約が無い(機械等を必要としない)業務・業種であれば、テレワークの実施・導入が可能でしょう。まずは、自社の中に条件にあった業務がどれだけあるかを特定することから始め、一部の企業での事例でありますが、テレワークの実施・導入が上手くいった企業の模倣を始めることから検討してみると良いでしょう。
何がテレワークの成功可否を分けるのか?
テレワークの実施母数が多くない中、一部の成功している企業に焦点を当てるとともに、弊社がテレワークの導入・実施に携わる中で重視している「5つのポイント」をもとに、テレワークの成功可否をご紹介していきます。
[ 5つのポイント]
導入・実施に向けて、満たしておくポイントは次の5つです。
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セキュリティ環境の担保
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インフラ(PC、サーバー等)の整備
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整備資金
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業務フローの置換
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制度設計
特に中小企業では、インフラ整備、セキュリティ環境整備のための資金を確保することから始まりますが、これは助成金・補助金・財務改善により課題を解消できます。資金的な問題は、いつから実行するかを定め、逆算で課題に取り組むことで課題を解消していきます。
資金的課題の前に整理する最も重要なポイントは、「業務フローの置換」と「制度設計」にあります。
上手くいっている企業ほど、業務遂行方法と業務環境に柔軟性を持たせ、適合するインフラを用意する。という順を踏み、業務遂行上の課題を潰し、心理的に安全な環境を用意することが成功のポイントとなっています。
業務フローを置換し、業務遂行上の課題をクリアにする
では、現在の業務をテレワーク環境下で行なった場合、何をテレワークで置き換えるのか?何がテレワーク環境下で制約条件となるのか?を特定するため、業務の棚卸しと必要な代替機能を特定しておくことが不可欠となります。
例)朝礼・・・定時にオンライン接続(オンラインシステムの導入)
印鑑・・・電子印の取得
稟議・・・稟議クラウドサービス
等、出社しなくても業務が遂行できる業務方法に置換しておくことが求められます。ここで求められる置換する業務とは、定まった業務以外にも、情報の共有方法や、コミュニケーションの方法など、「出社していた時に当たり前だったこと」まで棚卸しすることが重要です。
出社していれば、何気ない雑談などから、体調や業務の進み具合を把握できることもあり、メンタルヘルスチェックが可能ですがテレワークでは困難でしょう。代替機能として、定められた時間にオンラインで接続し、コミュニケーションを取るという取り決めや困ったときの相談方法などを事前に決定しておくことが有効と言えます。
② テレワーク環境下に求められる制度設計
次に、必要な制度を設けることで、生産性を担保しつつ、心理的に安全な環境を整備する必要があります。心理的安全な環境とは、チームのメンバーがそれぞれ不安を抱えることなく、自分の考えを自由に発言できたり、行動に移したりできる状態をいいますが、テレワークの導入により、マネジメント層、管理部門には払拭しきれないある疑念が付き纏います。
- 在宅勤務でサボる人が出てくるのでは?
- メンバーの作業進捗状況が見えづらくなるのでは?
- 誤魔化しや不正が起きないか?
と思う方もいることでしょう。この疑念を払拭するため、監視するシステムの導入や、こまめな定期連絡を求めるなどで解消を行うことも可能ですが、監視システムによるプライバシーの問題や、それ自体がストレス要因となり、メンタルヘルスの不調に繋がる可能性もある為、根本的な解決にならないケースもあります。
そもそもメンバーの進捗状況の管理等についてはマネジメント方法の課題であり、テレワークの実施是非とは関係がないものです。
本来のテレワークの実施・導入目的や、実施可能な業種・業務を考えれば、「メンバーが行なった作業の期日管理(進行管理)」や、「成果物に対する管理・評価方法」が明確であれば、時間外労働等の管理が必要な人事管理上の課題を除き、多くの課題は解消されます。具体的には、
在宅業務を行う方の諸事情に合わせた就業規則となっているか
例)小さな子供がいる家庭内での在宅勤務に適した内容か?
テレワーク環境下でも有効な人事評価制度、給与制度になっているか
例)評価要素が、勤務中の態度やプロセス評価にウエイトが偏ってないか?
マネジメント層向けの、管理手法や教育方法を補填する教育制度はあるか
例)管理職向けの教育制度は整っているか?
上記のように、制度にも柔軟性を持たせ、不足している制度を補填することで、テレワークを行う従業員の心理的に安全な環境を構築することができます。逆にいうと、これらが整備されていないと、従業員は心理的に不安定になり、業績に影響が出る可能性があるとも言えます。
③テレワーク導入の4つのステップ+1
ここまでで、必要なインフラ整備・資金確保インフラ購入・業務フローの置換・制度設計と解決してきましたが、一足飛びに導入しても上手くいきません。テレワークの導入に関する不安を完全に払拭するための、導入ステップを解説します。
[ 導入4ステップ ]
1、まずは、一部の管理職で実施する。
2、実施内容の課題を洗い出し、解決する。
3、必要なインフラを整備(購入)する。
4、テレワーク該当者へ導入説明会を実施する。
と、徐々に浸透させることで、テレワーク実施時の不具合の発生を最小限に抑えることができます。テレワーク実施後も定期的に上記4ステップの+1ステップ」として
5、テレワーク実施中の課題を共有し解決する
を実施してみてください。
今後、各社ベンダーの技術開発により、テレワークソリューションの普及が進み、さらに容易に課題が解決できるかも知れません。自社に合わせて柔軟に検討していく必要があります。
(※引用:総務省2019 情報通信白書 テレワークの導入やその効果に関する意識調査より )